鹿児島県硫黄島の花火ツアー開催します!

By 2015年7月16日イベント

先日、dot.の記事にも取り上げていただいた線香花火づくり。

その詳細を記事に書いてみましたので、良かったら読んでみて下さい。

硫黄岳

硫黄岳は、その名の通り硫黄の産地として有名で、平安時代から硫黄の採掘が行われてきました。しかし昭和に入り工業的硫黄の流通により価格が低下し、1964年に硫黄鉱山としての稼働が終了しました。ところが硫黄岳では現在も活発な噴気をあげており、硫黄の析出は続いています。条件のよい場所には、よく成長した硫黄の針状結晶の析出を見ることができます。

0天然硫黄

また硫黄岳の山腹には、硫黄を運ぶために作った石畳の道や、精巧な石組み等の産業遺産が遺されていますが、研究者以外にこれに価値を見いだす者はなく、立ち入る者はほとんどいません。しかし、この硫黄岳に再注目するのが今回の硫黄島花火ツアーです。

硫黄岳の歴史

薩摩硫黄島は、少なくとも1000年近く昔から硫黄が採掘されてきたようです。古くは平家物語にも「硫黄が島」の名前で薩摩硫黄島は登場します。「島のなかには、たかき山あり、鎮に火もゆ。硫黄と云物みちみちてり。かかるがゆえに硫黄が島とも名付けたり(平家物語)。」

1000年前、というのはちょうど中国(宋)で火薬が使われるようになり普及してきた頃と一致します。当時、宋は周辺諸国と交戦準備状態にあり、大量の火薬を必要としていました。しかし中国(特に宋が支配していたエリア)には火山は少なく、火薬の原料となる硫黄が手に入らないため輸入する必要がありました。

そこで近隣の火山列島である日本が着目され、大量の硫黄が中国へと輸出されてきました。特に薩摩硫黄島の硫黄は「天下随一」といわれるほど高品質のものだったようです。高品質の硫黄の産地だからこそ薩摩硫黄島は有名だったというわけです。

硫黄に再注目

花火の火薬の原料となる硫黄は、現在では工業的に作られた純度の高いものが用いられています。しかし硫黄島には天然の硫黄が産出するため、工業的に作られた硫黄ではなく、この土地ならではの天然の硫黄を活かして花火を作ろうと私たちは考えました。あえて不純物を含む硫黄を使うことで、独特の美しさを持つ花火になるかもしれないと考えたのです。

そして、天然原料の採集からの花火づくりを構想していた花火師の大島公司氏、趣旨に賛同いただいた岡山大学の山中寿朗准教授、岩手大学の溝田智俊名誉教授と連携して、硫黄島産の天然硫黄を用いた線香花火づくりを実現しました。

大島氏は、花火師でありながら漁師でもあり、さらに祭り屋でもあるという異色の人物。最近上梓た書籍は彼の生き方そのものを物語り、話題をよんでいます。

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火薬の準備

2013年10月、まずは3名と硫黄島へ渡り、噴気地帯の観察と、硫黄サンプルの採取を行いました。硫黄の析出が見られるエリアは火山性のガスがあり危険なため、採取はガスマスクを装着して入山しました。採取した硫黄は山中准教授が持ち帰り、研究室で純度を測定しました。2014年7月には再度硫黄島を訪れ、硫黄岳の麓で硫黄を採取しました。

山中准教授の監修のもと、持ち帰った硫黄の精製を行いました。精製装置は土鍋、ガスコンロ、排気ダクトなど身近な物を購入して組み立てました。装置は硫黄だけを蒸発させ器に受けるだけの単純な乾式蒸留の装置です。

2硫黄精製

4-6人用の土鍋(直径 30 cm 程度)を用いた場合、精製にかかった時間は1-2時間ほど。装置の改良を重ねながら精製を続け、2014年7月12-16日の硫黄島滞在中に精製できた硫黄は わずか250 g ほどでした。

3精製硫黄

ところで線香花火につかう黒色火薬は、硫黄、硝石、炭の三つの材料の混合物です。今回の火薬は、硫黄だけでなく炭も三島村にある黒島産のものを使うことで、より三島村の独特の美しさを持つ花火を作ることを大島氏が提案し、調達。

そして、それら用い、大島氏が試行錯誤を繰り返してついに配合を完成。独特の美しさを持つ線香花火のための黒色火薬が完成しました。

 4火薬

線香花火を作る

線香花火は、この火薬を和紙に包むことで完成します。

折り曲げた和紙に火薬を載せ(一度に使う量はわずか0.08g)、

5火薬のせる

くるくると撚っていくと線香花火が完成します。

6まく

 

空気の抜き方、撚りの強さが火花の持続性に影響するとのこと。

火をつけると美しい火花が咲きました!

7花火

日本産の線香花火は、火花が4段階に変化するのが特徴です。

ツアーを開催します

さて、やっと本題です!

この、天然硫黄を用いた火薬を使って、線香花火を手作りするWSとツアーを行います!!

今回の花火づくりワークショップには、筒井時正玩具花火製作所にも協力をいただきます!

 

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筒井時正玩具花火製作所は、途絶えかけていた国産の線香花火製作を受けつぎ、国産の材料にこだわった線香花火を作り続けている製作所。(ちなみに、現在流通している線香花火の中で、国産のものは1割にも満たないとのこと。)

また今回は、硫黄島の硫黄、黒島の炭、そして竹島の竹を筒にした「三島村花火」を検討中です。

この線香花火を手作りしてみたい!というあなた、ぜひこちらからお申し込みを!!!

大岩根尚

About 大岩根尚

宮崎生まれ。大学時代から地質学・海洋地質学を専攻し、2010年に東京大学にて環境学の博士号を取得。卒業後は国立極地研究所に就職し、南極観測隊として南極の調査に参加。2013年10月より三島村の地球科学研究専門職員に転身し、村のジオパーク認定に尽力した。2017年4月より三島村の硫黄島に移住し会社を設立。教育、人材育成にもフィールドを広げ活動中。