硫黄岳の噴火警戒レベルが2に上がりました。

By 2017年1月7日離島ブログ

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一昨日報道がありましたが、1月5日11時に、硫黄岳の噴火警戒レベルが2に上がりました。大きく報道されて、大丈夫?大丈夫??って感じになってるので、ちょっと解説したいと思います。

まず、噴火警戒レベルとはこういうものです。気象庁HPの図を転載します。vol_alert_levelいままでは、レベル1の「活火山であることに留意」つまり気をつけてね、くらいの感じだったのですが、今回はレベル2「火口周辺規制」になりました。

 

今回の状況はこちらに福岡管区気象台発表の詳しい資料がありますので抜粋して解説しようと思います。

また、こちらにも火山活動の状況が紹介されていますので参考にしてください。

 

まずはこちらが、最近の火山性地震の回数のグラフです。
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タテの棒の高さが1時間ごとの火山性地震の回数です。
1日0時頃から地震が始まって、4日に増えてるのがわかりますね。
1時間に1から5回くらいの火山性地震が起こってます。

火山性地震の回数を、もちょっと長い目で、2016年6月から昨日までみたのがこちら。%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2017-01-06-20-53-25左が2016年6月、右が昨日。高さはいちばん上が50回ですね。
この半年間では1日10回を超えることはほぼなかったのが、年を越してから急に1日50回くらいにまで増えた、ということがわかります。確かに急に増えた感ありますね!

 

これをさらに長い目で見たのがこちら。1998年(左)から2016年(右)です。
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これみると、けっこう山がありますね!
1998-2002年くらいまではひと月に2000回を超えることがざらにあった感じです。
2009−2010年も元気です。

月に2000回、ってのは単純に30で割ると1日に66回。
最近の調子いい時よりもっと活発な状態がずっと継続すると2000回超えるような感じになってくるわけですね。

 

同じ時間スケールで、ちょっと他のグラフ見てみます。
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さっき見た、ひと月あたり2000回を超えてた1998-2002年は、けっこう噴火が起こってるんですね。噴火が起こってる時は火山性地震も多い、と。納得。

 

しかし、です。
さっきの、1998-2016年の火山性地震のグラフみてください。実は、火山性地震が少なくなった2002年後半以降も、2004年終わり頃まで噴火は続いてるんです。

また、2009-2010年にも地震は増えてますが、噴火は起こってないんですね。

さらに最近では2013年に噴火が起こってますが、火山性地震はそれほど増えてはいない。

これはつまり、
「火山性地震が増えたからといって必ず噴火が起こるわけでもないし、火山性地震がないからといって噴火が起こらないとも限らない」ということです。
どうしようもない結論で申し訳ないなんですが、そういう性格の山のようです。

 

さて、一旦話を最近のことに戻します。%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2017-01-07-10-15-06これは12/31から昨日までの火山性地震の振幅を表したものです。
上にいくほど大きく揺れる、を示すグラフです。
これ見ると、1/4から1/5にかけて、大きな揺れが増えているのがわかります。

これは僕の推測ですが、揺れが大きくなる傾向が見えたことが警戒レベルを上げることになったひとつの要因ではと思います。

 

噴火警戒レベルが1(活火山であることに留意)から2(火口周辺 1 km 規制)に引き上げられたことで大きく報道されましたが、村の生活は変わっていません。硫黄岳はもともと火山ガスが多かったり登山道が崩落して危険なため、一般客の立ち入りを禁止していました。%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2017-01-07-10-29-03上の図で、赤い円が火口から1kmのラインです。あ、地理院地図を使って作図したものを貼っています。
もともとの一般客立ち入り禁止のラインは図の中央の赤ぽちのところ。
赤ぽちより火口側へは、例えば気象台の地震計などの観測機器が設置してあったりするので、そういう研究者がたまに調査に入るくらいのところだったので、警戒レベルが2に上がって「火口周辺 1 km 規制」になったところで、立ち入り禁止ラインが変わるわけでもなく、とくに島民の生活には影響なし、というところです。なので、ご心配くださった方どうもありがとうございました、なのですが、今のところ変化なしなので状況を静観していてください。

とはいえ、いつ何が起こるかわからないし、これは自然のことでこちらから変えようもないので、何もないことを祈りながら近づかないように見守りたいと思います。

大岩根尚

About 大岩根尚

宮崎生まれ。大学時代から地質学・海洋地質学を専攻し、2010年に東京大学にて環境学の博士号を取得。卒業後は国立極地研究所に就職し、南極観測隊として南極の調査に参加。2013年10月より三島村の地球科学研究専門職員に転身し、村のジオパーク認定に尽力した。2017年4月より三島村の硫黄島に移住し会社を設立。教育、人材育成にもフィールドを広げ活動中。