竹島の恵みをそのままに。大名筍の新しいかたち「水煮パック」

鹿児島の南方に浮かぶ人口約60人の小さな島、三島村竹島。
その名の通り、島の大部分が竹に覆われています。ここで採れる筍は「大名筍」と呼ばれ、昔は大名しか食べられなかったとも言われるほど、貴重で上品な味わいを持つ筍です。

最大の特長は「アクがほとんどないこと」。
採れたてをかじると、まるでとうもろこしや梨のような自然な甘みが広がります。アク抜きの必要がなく、筍本来の味と食感をそのまま楽しめるのが大名筍の魅力です。

大名筍の水煮パックの特長

上で紹介した大名筍の特長をそのまま活かした「水煮パック」が完成しました。
この水煮パックは加熱処理のみで製造しており、保存料や添加物は一切使用していません
アクの少ない大名筍だからこそ実現できた製法で、袋を開けてすぐに調理が可能です

茹でる・煮る・焼く・炒める・揚げるなど、さまざまな料理に使えて、島の自然の味をそのまま楽しめます。

また、常温で長期保存できるため、季節を問わず一年中いつでも大名筍を味わうことができます。

筍産業の危機と新しい挑戦

竹島では昔から筍の加工が行われており、1978年には加工工場も建設されました。


当時は島の主要産業として多くの人が関わり、世帯で月に70万円ほどの収入を得ていた時期もあったそうです。

しかし、収穫量の減少や人口減少が進む中で、加工場の運営は赤字が続き、工場の老朽化や衛生面の課題も深刻になっていきました。
さらに、従来の「水煮缶」は保存のためにクエン酸を使用していたため、しょっぱくなり、食べる前にもう一度茹でて酸味を抜く必要がありました。

本来アクが少ないという大名筍の強みが、この工程によって活かしきれない状況になっていたのです。

3年かけて生まれた“本来の味”

この現状を変えようと、島では何度も試行錯誤を重ねました。
クエン酸の量を減らしたりして試作を繰り返す日々。


そして3年の歳月をかけて、ようやく完成したのがクエン酸を使わない大名筍の水煮パックです。

アクのない大名筍だからこそ、加熱処理のみで製造が可能になり、下処理なしで使える便利さと、採れたての甘み・シャキッとした食感を両立することができました。

島をつなぐ筍加工の時間

竹島では、日常の中で子どもと大人が一緒に過ごす機会は意外と少なく、世代を超えた交流の場をつくることはとても大切です。
最近では、大名筍の水煮パックをはじめとする新しい加工品がいくつか生まれたことで、皮をむいたり、切り分けたりといった手作業の工程が増え、子どもからお年寄りまでが一緒に関われるようになりました。
筍の加工作業は、まさにその「つながりの場」となっています。
お互いに教え合いながら、笑い声や世間話が飛び交うその時間は、単なる仕事ではなく、島の暮らしを支える大切なコミュニケーションの場です。

こうした関わりを通して、作業の技術や昔ながらの知恵だけでなく、人と人とのつながりも自然と受け継がれています。
筍加工は、島の産業であると同時に、人を結び、島の暮らしを支えるあたたかな時間でもあります。

竹島の自然と人の想いが詰まった大名筍の水煮パックがたくさんの人に届くと嬉しいです。

Author 利瑳門前

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