こんばんは。片泊の長谷川です。
黒島にきてこの花の美しさに心を奪われました。
なんとも美しい鮮やかなオレンジ色で、独特の花の形。
黒島のあちらこちらで見ることができます。海岸近くにも見ましたし、道端でも咲いています。
かと思えば愛好して育てているお年寄りもいるらっしゃるとか。
花の形から、きっとこれは蘭の仲間だろうとあたりをつけました。
私は蘭に特別なあこがれがあります。私が蘭にあこがれを持つ様になったのは中学生の頃、友人のお父さんが温室を持っていて、多くの種類の蘭を育てていたのがきっかけだと思います。
花を見るとまさに花の完成形ともいえそうな美しさです。実際に、蘭というのは植物の進化的にいうと最後の方らしく、非常に進化した花だと言われています。
ラン科植物の花は非常に独特です。チューリップと同じで 6 枚の花びらがあるのですが、もともとは花びら 3 枚、がくが 3 枚だったものがみんな花びらになったのだとか。
それぞれ「外花被片」、「内花被片」とよぶそうです。
しかもそれぞれの花びらが全て同じ形ではありません。
特に、「内花被片」のうち1 枚が変わった形になってます。
袋状の部分、手のひらをすぼめた形の部分や、ひだ状の部分があるなど、他の花びらとは異なっています。
この花びらを唇弁(しんべん、リップ)と呼びます。
画像提供:PHOTO AC
唇弁、わかります?
この唇弁は昆虫が着地しやすいように進化したと言われています。
まさに花の究極の形です。
他の「内花被片」の2枚は同形で側花弁と言います。
外花被片も唇弁の反対側のものを背がく片、残りのものをを側がく片といいます。調べてみると勉強になりますね!!
さて、黒島の美しき謎の花に話を戻しましょう。
この花には唇弁らしきものもあり、きっと蘭だと思い調べてみましたが、いくら植物図鑑をめくってみても見つかりません。
ついにギブアップして専門家にお尋ねした所、「ダンドク」という植物であることが分かりました。
ダンドクは、調べてみると驚くべきことに園芸種のカンナの原種のひとつと言う事ですが、、こ、これがカンナの原種!?
大きさも形も、僕が知っているカンナとは全く違います。しかしよく比べてみると…
カンナ(画像提供:PHOTO AC)
おお花びらの配置が全くいっしょだ。つぼみのつき方も、葉もそっくりです。
しかし、品種改良でここまで違う花になるなんて驚きです。なんだか面白くありませんか?私が今更、植物の勉強をしても植物学者にはなれないでしょうし、何か功績を打ち立てることもできないでしょう。しかし、このちょっとした発見やわくわく感があるから、新しいことを学ぶのはやめられません。
さらに調べてみると、ダンドクについて面白いことが分かりました。ダンドクは熱帯アメリカ原産とのこと!ということはもちろんもともと日本にはなかった花です。1664年に成立した「花壇綱目」にはダンドクの記述があるそうで、日本への移入はなんと江戸時代初期と言われています。江戸時代に、はるばる南米から花を運んだ人がいるんですね。どんな気持ちでダンドクを船に乗せたんでしょうね。
さて、日本にやってきたダンドクですが、品種改良されて僕たちがよく知っているカンナに形を変え、それが普及するにつれ原種であるダンドクが栽培されることは少なくなってしまいました。現在では南西諸島に野生化した株が自生するのみのようです。
つまり今、南米から海を越えはるばるやってきたダンドクふんだんにあるのは、日本の中では私のいる黒島を含む南西諸島だけということになるようです。きっと私と同じようにダンドクに魅了される人もいるはず。鉢植えを作ったら黒島の特産品になりませんかねぇ。